広島で300年続く牡蠣養殖の老舗。「牡蠣は人生」 と語る18代目の牡蠣作りへの思い

広島から世界へ、人々を魅了する宮島の牡蠣

日本有数の牡蠣の産地として知られる広島県廿日市市で、江戸時代の創業から300年以上も養殖牡蠣を生産している島田水産。かつては船で牡蠣料理を振る舞っていたこともあったそうだが、現在養殖の筏から水揚げされる現場を目の前にして、採れたて新鮮な牡蠣を味うことのできる「牡蠣小屋」という形で引き継がれています。ここ広島の牡蠣生産の現場には、国内からだけでなく、コロナ以前にはYoutubeやInstagramなどのSNSを中心に興味を持った海外からのお客さんも多く来店し、特に香港や台湾からは毎月足を運ぶような常連さんもいたそうです。

そんな島田水産があるのは宮島を対岸に望む広島県廿日市の宮島口。かつて広島藩主も別邸を構えていた風光明媚なエリアで厳島の豊かな森から海に流れこむ栄養と、それを蓄える穏やかな瀬戸内の海が、3年という時間をかけて牡蠣を濃厚な味わいに育てます。

江戸時代から牡蠣養殖業を守ってきた18代目の取り組み

家業には17歳から携わるようになり、300年以上続く牡蠣養殖業の18代目となった島田さん。現在、社長業は息子さんに継ぎ会長となっていますが、「牡蠣は人生」と語る熱い思いは今も変わりがありません。

牡蠣は、以前は市場に卸していましたが、技術やインフラの変化により牡蠣の流通のは大きく変化し、取引額が落ち込んできた1980年代後半頃からは自ら組合を作って出荷するようになり、現在では島田水産から一日に出荷する牡蠣の量は実に8〜10万個になっています。

島田水産のブランド牡蠣『安芸の一粒』は、生産者自ら開発したことで話題になったもので、何度も失敗をしながらおよそ5年の歳月をかけ商品化に成功。最盛期で1日約700人が訪れる「牡蠣小屋」を始めたのも島田さんです。「買うだけでなく新鮮な牡蠣を食べられたらいいのに、というお客さんの声から、以前に九州の漁協の方で小屋を建てて食事を提供しているという話を思い出し試してみたのが始まりです」。最初は小屋やテーブルもかなり簡素なものだったのですが、屋根をつけ、風や寒さををしのぐ壁をつけ、と増築していったのが現在の牡蠣小屋です。当初のメニューは焼き牡蠣しかなかったのですが、昔かき船で出していた料理を叔母さんに教えてもらって、徐々に増やしていきました。

水揚げ作業の迫力を間近で見ることのできるツアー企画も

牡蠣の水揚げ作業は、まだ日が昇らない早朝から行われます。島田水産では毎年10月〜5月までの間、海水温が低い時期に行われる、迫力ある牡蠣の水揚げ作業を見学することのできるツアーも実施しています。 「牡蠣の水揚げシーンは、テレビ番組などでもよく扱われる馴染みのある映像です。10m程ある一本の垂下連に300〜500個の牡蠣が付いたものを引き揚げる作業現場を、間近で見てもらえます」。

ツアーは朝7時に集合。水揚げの現場へ船で向かう最中、牡蠣の養殖に適した瀬戸内の話、エコサイクルの話などを聴きながら、牡蠣筏にも上陸して養殖風景の観察もします。

早起きをして見る特別な宮島と、新鮮な牡蠣の味を体験してほしい

牡蠣筏での水揚げ見学の後、船は宮島の方角へ。「空気が澄んでいる朝は、宮島がもっとも美しく見える時間帯。特別な景色です」、幼い頃から何度も見続けている光景ながら、今でも毎回感動を覚えるそうです。

海の上から宮島を参拝したら、島田水産桟橋に戻り、島田さんの奥様が作る牡蠣雑炊や、炭火で焼いた香ばしい焼き牡蠣などで暖まります。海風に当たったあとの朝食は格別です。 広島の代表的な食材・牡蠣を見て食べて、海からの宮島を体験できる、ギュッと詰まった2時間のツアーとなっています。

島田水産ではツアーでも提供している新鮮な生牡蠣や保存がきくむき身の牡蠣をオンライン販売しています。どこまでも穏やかな瀬戸内の早朝の張り詰めた空気や、朝日に照らされる宮島をぜひ想像しながら召し上がっていただければと思います。

天然の親牡蠣にこだわった島田水産の牡蠣